ディオールのオートクチュール部門のアトリエ責任者であるエステルは、次のコレクションを終えたら退職する。準備に追われていたある朝、地下鉄で若い娘にハンドバッグをひったくられてしまう。犯人は郊外の団地から遠征してきたジャド。警察に突き出してもよかった。しかし、滑らかに動く指にドレスを縫い上げる才能を直感したエステルは、ジャドを見習いとしてアトリエに迎え入れる。時に反発しながらも、時に母娘のように、そして親友のように美の真髄を追い求め濃密な時間を過ごす二人だったが、ある朝エステルが倒れてしまう・・・。最後のショーは一週間後に迫っていた――。
映画の衣装デザイナーのキャリアを持ち、現在はディオール専属クチュリエ―ルのジュスティーヌ・ヴィヴィアン監修のもと、初代”バー”ジャケットや重ねづけされたプリーツが軽やかに揺れる”フランシス・プーランク”ドレスに、直筆のスケッチ画など、貴重なアーカイヴ作品の数々がスクリーンに登場する。出演は、フランスを代表する大女優ナタリー・バイと、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』など話題作が続く注目株のリナ・クードリ。出会うはずのなかった二人の女性を結びつけたのは、自分の腕で生きていく覚悟と美を生み出す繊細な技術。ディオールのアトリエを舞台に繰り広げられる、眼福と感動の人生賛歌。
ユダヤ系チュニジア人として幼少期をパリ郊外ラ・クルヌーヴの大規模団地「cité des 4000」で過ごす。その後文学を学び広告クリエイターとなる。小説家として6冊の本を出版しており、2011年に『Papa Was Not a Rolling Stone』でCloserie des Lilas賞を受賞。2014年には自ら同作を映画化し、2016年のトロントユダヤ映画祭で長編映画賞を受賞。
1948年7月6日生まれ。父親は画家。失語症のため14才で学校を中退し、モナコのダンススクールに入学。17才でニューヨークへ渡り、ロシアバレエの修行を積む。帰国後、コンセルヴァトワールで演技を学ぶ。フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、モーリス・ピアラなど偉大な監督たちの作品に出演、セザール賞を始め受賞多数。90年代以降は『アメリカン・ビューティ』(99)や『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(02)などハリウッド作品に抜擢され、その後も若き天才グザヴィエ・ドランの『わたしはロランス』(12)、『たかが世界の終わり』(16)にオファーされるなど第一線で活躍を続けている。2015年にはフランスの大ヒットドラマシリーズ『エージェント物語』で娘ローラ・スメットと初共演、その後『田園の守り人たち』(17)で映画初共演を果たす。
1992年10月3日アルジェリア生まれ。ジャーナリストの父とバイオリン教師の母という文化的な家庭で育つ。内戦中に両親と共にフランスに避難。舞台芸術の学位を取得後、ストラスブール国立劇場に入団。テレビシリーズへの出演を得て『Les Bienheureux』(17)で映画デビュー。その演技でヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門の主演女優賞を受賞。2019年のカンヌ国際映画祭出品作の『パピチャ 未来へのランウェイ』(19)の主演を射止める。ウェス・アンダーソン監督の新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』でビル・マーレイやティモシー・シャラメと共演。最新作はカンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション作品の『ガガーリン』。